会員症例報告1

私の考える歯周治療における歯科衛生士の患者さんへの関かわり方

茅ヶ崎デンタルクリニック

安田 かおり

【はじめに】

歯周治療の成功には,患者の理解と協力が重要である。私が歯科衛生士として15年間歯周治療へ携わり,個々の患者さんへ合わせたTBI,セルフケアの重要性を伝え,大学病院で歯周基本治療を行ないSPTへと移行した症例,転職後,経過途中だが良好な経過を辿っている症例を交え,私の考える歯科衛生士の患者への関わり方を報告する。

【症例の概要】

症例1:64歳,男性。多剤服用。広汎型慢性歯周炎(中等度)と診断。歯周基本治療,生活習慣指導,カンジダ検査,上顎PD作製,再評価後SPTへ移行。

症例2:52歳,女性。喫煙歴30年1日10本程度。ブラキシズム。広汎型慢性歯周炎(中等度)と診断。歯周基本治療,生活習慣指導(禁煙指導および治療),再評価,FOP。その後,補綴処置,ナイトガード装着,再評価後,SPTへ移行。

症例3:55歳,男性。喘息。広汎型慢性歯周炎(中等度)と診断。歯周基本治療,再評価,SPTへと移行予定。

症例4:27歳,男性。広汎型慢性歯周炎(中等度)と診断。歯周基本治療,再評価,SPTへと移行予定。

【まとめ】口腔内写真や位相差顕微鏡などの視覚的な媒体を用いることで患者のモチベーションをあげ,各患者の全身疾患に適した検査項目,生活習慣や性格に合わせた指導方法を行う事で,セルフケアが改善され,歯周組織の安定が得られた。

歯周治療において,歯科衛生士として各患者のことを理解し、患者自身が口腔内の状態を把握できるよう導くことが重要であると感じた。

会員症例報告2

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薬剤性歯肉増殖症を有する患者に対してアジスロマイシンを併用したフルマウスSRPを行った一症例

中谷歯科医院

​梶山創一郎

【症例の概要】

降圧薬を服用している薬剤性歯肉増殖症を有する患者に対して、歯周薬物療法を行い、現在まで良好に経過している症例を報告する。

【初診】患者:37歳、男性、喫煙者。初診:2018年3月。左上に歯がないことを主訴に来院。既往歴に高血圧(153/102)を有し、現在アムロジピンを服用している。

【診査・検査所見】全顎的に歯肉が発赤し、浮腫性と線維性の歯肉腫脹が混在している。軽度の水平性骨吸収であるが、全顎的に深い歯周ポケットを認め、プラークコントロール(PC)不良である。PCR93.0%, BOP(+)94.3%, 4mm以上PD部位95.3%であった。

【診断】

広汎型慢性歯周炎(ステージⅡ グレードC)、薬剤性歯肉増殖症

【治療計画】

1)歯周基本治療(内科医への紹介、禁煙指導を含む) 2) 再評価 3) 歯周外科治療 4) 再評価 5) 口腔機能回復治療 6) 再評価 7)メインテナンスまたはSPT

【治療経過】

歯周基本治療後の再評価の際、浮腫性の歯肉腫脹及び深い歯周ポケットが認められたため、アジスロマイシンを併用したフルマウスSRPを行った。再評価後に歯周組織の改善が認められ、 下顎前歯部の線維性歯肉にのみ歯肉剥離搔爬術を行うこととした。歯周外科処置後の再評価により、歯周組織の安定を確認し、SPTへと移行した。

【考察及び結論】

初診時では歯周外科処置を全顎的に行う予定であったが、カルシウム拮抗薬をアンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬に変更することとアジスロマイシンを併用したフルマウスSRPを行い低侵襲な歯周治療を行うことができた。途中から健康意識が向上し禁煙にも積極的に取り組み、高血圧に対しても食事療法も取り入れているとのことだった。今後はSPTを継続し、PCを良好に維持することと、モチベーションの維持を徹底する予定である。

特別講演1

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歯周基本治療の可能性

谷口歯科医院

谷口威夫

 

私たちが歯周病に取りつかれてから,はや45年を迎えようとしています.

45年前,お見えになったのが重度の歯周病の患者さんでした.したことは新米歯科衛生士が見よう見まねでやったSRPと患者さんの熱心なブラッシングでした.

その後,まさに世界の歯周治療の怒涛のように押し寄せる荒波の中で,アップアップしながらも,一人でも多くの患者さんを歯周病から救おうと必死になって道を見つけようともがいてきました.一時は歯周外科に夢中になった時期もありましたが,迷いながらも今はっきりとわかってきたことは単根歯であれば相当重度の歯周病でも歯周基本治療で治るということです.重度の歯周病には重度のやり方があると思います.45年の経過の中で迷いながらもなんとなくクリアーになってきたことを披瀝し,これからの歯周病医療の在り方の一助になれば幸甚です.

特別講演2

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歯周組織再生療法の変遷と臨床応用

東京医科歯科大学歯周病学分野教授

岩田隆紀

 

組織工学の概念では、細胞担体基質、生きた細胞、特異的な細胞活性を促進するシグナル分子、の三要素が組織の構築に必要とされており,歯周組織の再生においても臨床応用されている。たとえば、自家骨や結合組織にはこれら三要素すべてが含まれており,骨や軟組織の造成においてはゴールドスタンダードとなっているが,吸収量をコントロールすることが難しく,術者の経験と勘を頼りに,やや多めに移植されることが多いようである。一方では採取のための手術が必要であり、患者への追加負担は避けられず、採取量にも限界がある。よって、様々な代替品が研究開発され、一部は製造販売承認されるに至っている。

特にセメント質―歯根膜―歯槽骨からなる付着器官を再生させるためには、その担当細胞である歯根膜幹細胞を制御することが主眼とされてきた。初期の歯周組織再生療法としては,遮蔽膜により骨欠損部への上皮細胞と歯肉結合組織細胞の侵入を防ぐことで,歯根膜と歯槽骨からの細胞供給を期待する組織再生誘導法(GTR法)が1980年代に提唱され,臨床応用されている。その後,歯周組織の発生に関与すると考えられるエナメルタンパクを用いた歯周組織再生療法が1990年代に登場し,さらには2016年には世界初の歯周組織再生医薬品であるリグロス(塩基性線維芽細胞増殖因子)も臨床現場で使用可能となり,GTRと生物学的活性物質,さらには骨補填材も組み合わせることで,より確実な歯周組織再生を試みる臨床研究が実施されてきている。本講演では現在臨床応用されているバイオマテリアル全般を紹介し、これまでわかっていることをレビューするとともに、次世代マテリアルの可能性を議論してみたいと考えている。