特別講演

有床義歯補綴から歯周衛生を考える

          鶴見大学歯学部有床義歯補綴学講座

                  教授 大久保力廣

私たち補綴医はパーシャルデンチャー製作時に設計の三原則,すなわち①義歯動揺の抑制,②義歯破損の防止,③口腔衛生学的配慮を遵守するよう努めています.義歯の動揺や破損の防止については,歯に最大限の支持と把持を求め,フレームワークの構造設計を行い対処しています.口腔衛生学的配慮としては,う蝕や歯周病のリスクを軽減させるため,できるだけ歯面や辺縁歯肉を義歯で覆わないよう留意しています.

しかしながら,支台装置と歯面との接触面積は広い方が,支持や把持効果も大きくなることから,義歯動揺の抑制と口腔衛生はトレードオフの関係にあるのかもしれません.固定性補綴に比較して清掃性に優れた可撤性のパーシャルデンチャーも口腔内では完全な異物です.その異物により機能と審美を両立させながら予後を成功に導くためには,設計原則の遵守と精度の高い義歯製作に加え,徹底したプラークコントロールとフォースコントロールをベースにした適切なメインテナンスが必要不可欠です.

そこで,本講演では補綴医として日々注意している義歯設計上の留意点とメインテナンス法をご紹介させていただき,歯周治療をご専門とする先生方のご批判を仰ぎたいと存じます.

歯科用コーンビームCTによる歯周組織の診断と治療への応用

鶴見大学歯学部口腔顎顔面放射線・画像診断学講座

​教授 小林 馨

歯科用コーンビームCT(CBCT)が臨床に導入されてから約20年が経過した。著者らの施設ではごく初期の1998年からCBCTを稼動させてきた。CBCTの臨床における適応は広範囲にわたっており様々な報告がされてきている。慢性歯周炎については、臨床的に検討され報告されているか、エナメル・セメント境から骨縁までの距離計測では、口内法X線像とCBCT像との間で優位な差はなかったとする報告が多い。しかし、CBCTは三次元情報が得られるので有効であると考察している。歯周治療の指針においても歯周病検査(6)エックス線写真 デンタルエックス線写真もしくはパノラマエックス線写真を基本とし,必要に応じて両者を組み合わせたり,撮影枚数を増減する。また,最近普及してきたコーンビームCT(CBCT:cone beam computed tomography)は歯周組織の3 次元的構造を検査することができることから,骨欠損形態や根尖病巣との関わりなどを知るうえで優れた検査法である。とされているが、どのような状態で最も有効なのかの具体的なデータの提示は不十分であると思われる。

 そこで、演者らのCBCTの研究からCBCTの診断上の特質について概説する。また、治療への応用で特に3Dモデルの導入の課題について考察する。

コミュニケーションの心理学

​〜患者さんと一生おつきあいするために〜

日本歯科大学東京短期大学

​准教授 野村正子

歯周病や2型糖尿病は、その罹患率の高さから日本の国民病といえる。患者さんの心の動きや行動パターンの変化を感じ取りながら、患者さんの健康を一生涯サポートしていくことは、担当している歯科衛生士や保健師(看護師)にとっての醍醐味であろう。

生活習慣病をはじめとする多くの慢性疾患の予防と治療には、人が健康のために良いとされる行動をとり、維持することが重要である。しかし歯周治療において、歯周基本治療中や歯周外科治療中はプラークコントロールを熱心に行う患者さんでも、口腔機能回復治療が終了し、お口の悩みが解決すると、自発的なプラークコントロールの維持が難しくなり後戻りを繰り返すことがある。SPT期間は、それまでの患者さんとのコミュニケーションの良し悪しが見えてくる期間でもある。

患者さんとのコミュニケーションは、心理学においては、究極の対面コミュニケーションに分類される。言い換えれば、良好な対面コミュニケーションをとらざるを得ない医療職は、最もAIに置換しにくいプロフェッショナルともいえる。今回は、長期にわたるコミュニケーションを維持するために、心理学的なヒントをお話しできたらと考えている。

会員症例報告

3Dプリンターを用いて歯周組織再生療法を行った症例

 

                                鶴見大学歯学部歯周病学講座

​                           助教 鈴木琢磨

はじめに:近年 診断、術式の選択に歯科用CT(CBCT)が応用されている。本症例おいて、CTの画像データを元に3Dプリンターにて模型を作製し、術前にシミュレーションしてから再生療法を行った症例について報告する。

患者 47歳、女性。右上の歯茎が腫れることを主訴に来院。3年前から歯肉の腫脹に気づいていたがそのまま放置していたという。家族歴・全身既往歴について特記事項はなし。

口腔内診査・検査所見:PCRは18%、で右上臼歯部に4-8mmの歯周ポケットを認めた。

診断:限局型中等度慢性歯周炎、14,15外傷性咬合

治療方針:1)歯周基本治療 2)再評価 3)歯周外科治療 4)再評価 5)補綴処置 6)SPT

治療経過:歯周基本治療により歯肉の炎症は改善した。深い歯周ポケットや垂直性骨欠損が残存部位に対して歯周外科処置を施した。17-15、13,12、26、4647にアクセスフラップ、12に歯根端切除術、21に根尖掻爬術、14に再生療法を行った。

考察・まとめ:歯周治療の結果、深い歯周ポケットの改善と出血部位が減少し安定した歯周組織を獲得することができた。14について、3Dプリンターで作製した模型で術前シミュレーションしたことにより適切な切開を加えることができ、手術時間も短く処置を終えることができ、予後も良好に経過している。

重度歯周炎患者に生活習慣改善を契機に包括的治療を行った症例

 

                                  鶴見大学歯学部附属病院

​                       歯科衛生士 小川夏子

 本症例は重度歯周炎患者に対し、生活習慣改善を行うことで歯周病治療への意識が高まり、長期にわたり良好な経過を維持している症例である。

患者56歳、男性(初診日:2005年3月1日)

主 訴:歯がぐらつきうまく咬めない。

40歳頃より近医にて治療を受けていたが改善せず、本学附属病院を紹介され来院した。習癖として喫煙がある。

歯肉に強い炎症は認めないが4〜8mmの歯周ポケットが存在し、不適合な部分床義歯を装着していた。全顎にわたり骨吸収が認められる。  

診断:広汎型重度慢性歯周炎

初診時治療計画:口腔清掃指導、禁煙指導を含む歯周病治療。義歯等による咬合機能回復。

治療経過:当初、患者の状況から義歯による補綴を行うといった非積極的な治療を予定していたが、口腔清掃指導、禁煙、食習慣指導を含む生活習慣改善の徹底を行った結果、歯周病治療への意欲が高まった。これにより矯正治療およびインプラント治療を含む包括的治療を行うことができ、14年間にわたり良好な状態を維持している。

​鶴見大学歯学部歯周病学講座  神奈川県横浜市鶴見区鶴見2-1-3

 dept-perio@tsurumi-u.ac.jp  045-580-8431, 8432, 8433, 8434

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